ここでは、分子動力学シミュレーションを実行するにあたって必要な、系の情報を格納したインプットファイル(prmtopファイル、inpcrdファイル)の作成の手順を解説する(詳細は計算を実行するために必要なファイルを参照されたい)。今回の例では、アミノ酸配列KLVFFAEから成る7残基のペプチドを例として取り扱う。この配列は、その異常凝集体がアルツハイマー病の原因とされる、アミロイドβと呼ばれる40残基ほどのペプチドの一部分である。
アミノ酸配列KLVFFAEの構造
最初にAMBERがインストールされPATHが通されたディレクトリで、LEaPプログラムを読み込む。LEapにはtleapとxleapが存在するが、本チュートリアルではtleapを用いる。たんぱく質やペプチドをシミュレーションする際には、通常以下のコマンドによって力場とトポロジーを読み込む。ここでは以下のようにleaprc.ff14SBを読み込む。たんぱく質以外の分子を取り扱う際には、他のファイルを読み込まなければならないことに注意されたい。

tleap -s -f $AMBERHOME/dat/leap/cmd/oldff/leaprc.ff14SB

tleapでleaprc.ff14SBを読み込ませた状態で、以下のコマンドによってKLVFFAEのアミノ酸配列を作成する(既にあるPDBファイルを読み込む方法はページ下に別途記載した)。この時、読者のシミュレートしたい環境によっては、アミノ酸のプロトン化状態も考慮する必要があるかもしれない。今回は中性条件下でのシミュレーションを想定している。

> test = sequence{NLYS LEU VAL PHE PHE ALA CGLU} 

次にシミュレーションBOXを作成し、水分子で満たす。この時、シミュレーションBOXの大きさは十分に大きくする必要があり、1つの目安としては、分子からシミュレーションBOXの端までの最短距離が15 Å程度であろう。

> center test # test、即ち作成したアミノ酸配列の中心座標を出力する                             
The center is at: 13.20, 8.35, 0.38
> translate test {-13.20, -8.35, -0.38} # testの中心座標を原点にずらす
> center test # testが原点に移動していることを確認する          
The center is at: 0.00, 0.00, -0.00
> set test box { 40 40 40 } # 原点を中心としたシミュレーションBOXの辺の長さを指定する
> solvatebox test TIP3PBOX 0.1 # TIP3P(水分子のモデル)でシミュレーションBOXを満たす
  Solute vdw bounding box:              40.000 40.000 40.000
  Total bounding box for atom centers:  40.200 40.200 40.200
  Solvent unit box:                     18.774 18.774 18.774
  Total vdw box size:                   43.560 43.625 43.467 angstroms.
  Volume: 82601.000 A^3 
  Total mass 34651.038 amu,  Density 0.697 g/cc
  Added 1876 residues.
 

最後に、系の情報を格納した一時ファイルであるprmtopファイルとinpcrdファイルを作成する。

> saveamberparm test test.prmtop test.inpcrd # test.prmtopとtest.inpcrdのファイルを作成する
Checking Unit.
Building topology.
Building atom parameters.
Building bond parameters.
Building angle parameters.
Building proper torsion parameters.
Building improper torsion parameters.
 total 26 improper torsions applied
Building H-Bond parameters.
Incorporating Non-Bonded adjustments.
Not Marking per-residue atom chain types.
Marking per-residue atom chain types.
  (Residues lacking connect0/connect1 - 
   these don't have chain types marked:

	res	total affected

	CGLU	1
	NLYS	1
	WAT	1876
  )
 (no restraints)
> quit # tleapを終了する

尚、PDBファイルを書き出す場合には

savepdb test ファイル名.pdb

として書き出すことが出来る。


既にあるPDBファイルを読み込む場合

Protein Data Bank (PDB)(https://www.rcsb.org/)から分子構造を取得してきた場合には、最初にアミノ酸配列を作成したコマンドの代わりに以下のコマンドでPDBファイルを読み込む。

> test = load ファイル名.pdb


参考文献
http://ambermd.org/doc12/Amber16.pdf