Metadynamics[1]は反応座標に沿った自由エネルギー地形(Potential Mean Force, PMF)を効率的に計算するための方法である。この方法では、ガウシアン型のポテンシャル \begin{equation} V_{\rm G}(S, t)=w \sum^{t}_{t'=\tau_{\rm G},2\tau_{\rm G}} \exp(-\frac{S-s(t')}{2\delta s^{2}}) \end{equation} を時々刻々と追加していくことで、反応座標上でシミュレーションが局所安定状態に留まってしまうことを防ぐことが出来る。ここで、$w$はガウシアンの高さ、$\delta s$はガウシアンの幅、$s(t)=S(x(t))$は時刻$t$での反応座標の値である。Metadyanamicsでは、十分に長い時間のシミュレーション後に$V_{\rm G}(S, t)$はPMFの推定値を与えることが仮定される。

\begin{equation} \lim_{t \rightarrow \infty} V_{\rm G}(S, t)=-F(S)+const. \end{equation} 動画による直感的な説明としては、以下のYouTubeのページを参考にされたい。

https://www.youtube.com/watch?v=IzEBpQ0c8TA
https://www.youtube.com/watch?v=SOq2xiYsGbM

この方法をNAMDで使用する際には、Metadynamicsのガウシアン型ポテンシャルと、反応座標を定義するインプットファイルであるmeta.inを作成する必要がある。以下では、ある分子1と分子2の重心位置間距離を反応座標にする場合の例を示す。

colvarsTrajFrequency      2000 # 反応座標の値を記録する頻度
colvarsRestartFrequency   1000 # 反応座標のリスタートファイルを記録する頻度

colvar {
           name pair

           lowerBoundary 0.0 # 0.0と50.0 Åの位置にhalf-harmonicポテンシャルを設定する
           upperBoundary 50.0
           lowerWallConstant 10.0 # 0.0と50.0 Åの位置のポテンシャルの定数として10 kcal/molを設定する
           upperWallConstant 10.0
           width 0.2
           distance { # group1とgroup2で定義した分子の重心間距離を反応座標として使用する
                                group1 {
                                           atomsFile reference1.pdb # 分子1と分子2のpdbファイル(ただし、対象となる分子1のB列を1.00としたもの)
                                           atomsCol B
                                           atomsColValue 1.00
                                           }
                                group2 {
                                           atomsFile reference2.pdb # 分子1と分子2のpdbファイル(ただし、対象となる分子2のB列を1.00としたもの)
                                           atomsCol B
                                           atomsColValue 1.00
                                           }
                                }


}

metadynamics {
   name     meta-distance
   colvars  pair # Metadynamicsに使用する反応座標を定義する
   hillWeight              0.05 # ガウシアン型ポテンシャルの高さ
   newHillFrequency        2000 # ガウシアン型ポテンシャルの追加頻度
   dumpFreeEnergyFile      yes # 定期的にPMFをpmf形式のファイルに書き出す
   writeHillsTrajectory    on # ガウシアン型ポテンシャルの追加のlogファイルを書き出す
   hillwidth               2.0 # ガウシアン型ポテンシャルの幅
}

更に、設定ファイルにおいて、以下を付け加える。

# Metadynamics
colvars             on
colvarsConfig       meta.in

最終的に得られたPMFは、pmf形式のファイルをgnuplotなどを用いて直ちに可視化することが出来る。以下はgnuplotの例である。

plot 'ファイル名.pmf' using 1:2 with lines

今回の例では一次元のみの反応座標の場合を取り扱ったが、多次元でも同様の計算を行うことが出来る。その場合には、複数の反応座標をmeta.inにおいて定義し、metadynamicsの反応座標の定義でそれらを全て記述すればよい。また、NAMDにはMetadynamicsの改良版であるWell-tempered metadynamicsも実装されている。詳しくは、参考文献のチュートリアルを参考にされたい。


参考文献
[1] A. Laio and M. Parrinello.: Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 99 (2002) 12562.
[2] http://www.ks.uiuc.edu/Training/Tutorials/